嫡出否認
嫡出否認(ちゃくしゅつひにん)とは、嫡出子(婚姻関係にある男女間に生まれた子)であると推
定された子について、その嫡出性を否認する行為のこと。
実親子関係が成立するには自然血縁関係が必要であり、母子関係については基本的には懐胎・分娩
という事実から明確にすることができる(通説・判例として最判昭37・4・27民集16巻7号1247頁
。ただし、近年、代理母などについて新たな立法上の課題を生じている)。
これに対し、沿革的に父子関係を明確にするのは難しい問題とされてきた。ただ、通常、母が婚姻
している場合には、母の夫が子の父であろう蓋然性が極めて高いことから、民法(明治29年法律第
89号)は772条で「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と規定するとともに、774条で
「第七百七十二条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる」と規定す
る。すなわち772条は父性の推定(子の父が誰かについての推定)の規定であると同時に、嫡出性
の推定の規定でもある(774条は772条が嫡出性を推定するものであることを前提とする)。772条
の推定を受ける子を推定される嫡出子(嫡出推定を受ける嫡出子)と呼ぶ。
しかし、772条は生物学的な親子関係を前提とするものではないことから、実際には推定される関
係が事実と異なる場合を生ずることがある。このような場合、772条により推定される嫡出子につ
き、夫は自分と血縁関係にある実子であることについて否認することが認められる。嫡出否認は訴
えをもってのみなしうることから嫡出否認の訴えという(ただし、調停前置主義がとられている点
に注意)。
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