法解釈
法解釈(ほうかいしゃく)とは、各種の法源について、その内容を確定することをいう。法源とは
、法解釈の対象となる、法の存在する形式のことをいう。
文字に表された抽象的規範ないし法則は、たとえそれ自体は一見極めて明瞭なようでも、千変万化
の具体的事象に適用するに当たっては、不可避的に解釈上の疑義を生む(右画像参照)。法学の対
象とする法もまた例外でないから、法律を暗記してもそれだけでは役に立つものではなく、ここに
法解釈の必要が生じる(→#論理解釈)。
法解釈においては、単に具体的事件のみに妥当な結論を導くことができれば足りるものではなく、
同種の事件が生じたときにも、同様の結論を得ることができるように客観的に行われなければなら
ない。さもなければ、どのような行為があればどのように法的に判断・処理されるかについて一般
人が不安をもつ必要のない状態、すなわち法的安定性が害されてしまうからである。したがって、
法解釈においては、法的安定性を害すること無く、いかにして個別の事案についての社会的正義、
すなわち具体的妥当性を発揮するかが最大の課題である(→#立法者意思説と法律意思説)。そし
て、注意しなければならないのは、法的安定性と具体的妥当性のどちらを重視し、両者をどこで調
和させるかは、時代によって(→#概念法学と自由法論)、また法律の領域によっても異なってく
るということである(→#刑法及び行政法における慣習法)。要するに、解釈という論理操作を経
ずに意味の明瞭な法は、一つも無いと言ってよい。
そこで、次のように言われている。
真の解釈のためには為すべきことが多い。諸外国の類似の制度を顧み、且沿革に遡って現行制度の
特質を理解することがその一である。判例を明かにして条規の文字の実際に有する活きた意味を知
ることがその二である。社会生活の実際に即して法規の作用を検討し、人類文化の発達に対して現
行法の営む促進的或は阻止的な作用を理解し、進んでその批判を努むべきことがその三である。社
会生活の変遷に順応した、しかも現行法の体系として矛盾なき統一的解釈理論を構成することがそ
の四である。而して、その何れの場合にも先進の学者の説に学ぶべきことは謂うまでもない。これ
をその五とする。
— 我妻栄
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