国民投票による立法の可否

閲覧数2,800
ダウンロード数2
履歴確認

    • ページ数 : 4ページ
    • 会員660円 | 非会員792円

    資料紹介

    憲法レポート
    「国会は、必要があると認めるときは、議決により法律案を国民投票に付することができる。その場合、投票の過半数の賛成があるときは、右法律案は法律として成立する。」という趣旨の法律が制定されたと仮定する。この法律に含まれている憲法上の問題について論じなさい。
    1.問題の所在
    設問の法律は、国民投票により法律を成立させることを認めるものである。しかし、憲法41条は国会を「国の唯一の立法機関」と定めていることから、当該法律が同条に反しないかが問題となる。
    (1)同条にいう「唯一の」とは、具体的には、国会中心立法の原則と国会単独立法の原則の2つを意味する。
    国会中心立法とは、国の立法はすべて国会を通し、国会を中心に行われること、すなわち国会が立法権を独占することを意味し、国会単独立法とは、法律は両議院の可決のみで成立し、他の機関は参加しないこと、すなわち国会の手続きのみでなされることをいう。
    (2)本問法律は、国民が直接立法することを許容するものであり、この2つの原則のうち、国会単独立法に反するとも思われる。
    思うに、同条は、国民主権主義、権力分留主義からの双方の要請に基づくものである。すなわち、国民主権を全うするためには、法規の存廃は主権者たる国民の代表者によって構成される国会に委ねられるということになり、また、三権分立を採用することを明らかにするために、立法権は国会に専属する旨定めて権限の分配を行ったものといえる。とすれば、憲法は国民による選挙で選ばれた代表者で構成される国会で立法がなされることが最良の方法と考えているといえる。しかし、一方で、国会単独立法の例外として、内閣の法律提出権(72条)、憲法改正の国民投票(96条)、特別法の住民投票(95条)が認められている。そこで、憲法が明文で定める以外にも例外が認められる余地があるのではないか、本問では、国民により立法がなされるという国民投票による立法、直接民主主義的な制度も許容されるといえるのではないか問題となる。この点を考えるにつき、前提として、国民主権の意義が問題となると思われる。
    2.国民主権の意義
     国民主権とは、国政についての最高の決定権、つまり、国の政治のあり方を最終的に決定する力または権威が国民に存することを意味する。日本国憲法は、前文において「主権が国民に存する」と規定し、また、第1条において「主権の存する日本国民」と規定しており、国民主権原理を採用しているが、その具体的意味内容については、争いがある。
    (1)第1の考えは、国民主権は、国家の意思力を構成する最高の機関意思、国家の原始的直接機関として統治権を発動する力が国民に属するとする主義であり、国民とは参政権を与えられている者の全体であるとのものである(最高機関意思説)。この考えは、国民主権の持つ権力的契機を重視するもので、このように考えなければ、憲法が国民主権を定めた意味が希薄化することを根拠とする。
     しかし、主権は憲法によって決まる以前に想定されるべきものであるし、国民の中に主権者たる者とそうでない者とがあることになり、民主主義の根本理念に反するといった不都合がある。
    (2)第2の考えは、国民主権にいう国民とは、観念的統一体としての全国民であって、現在の国民のみならず、過去・未来の国民も含めた自然人たる国民の総体をさすこともあれば、現在の全国民をさすこともあり、実定法上国家機関として活動する国民とは異なり、具体的意思表明は予定されていないことを前提に、国民主権とはこのような国民全体が国家権力の根源ないし正当性の根拠で

    資料の原本内容 ( この資料を購入すると、テキストデータがみえます。 )

    憲法レポート
    「国会は、必要があると認めるときは、議決により法律案を国民投票に付することができる。その場合、投票の過半数の賛成があるときは、右法律案は法律として成立する。」という趣旨の法律が制定されたと仮定する。この法律に含まれている憲法上の問題について論じなさい。
    1.問題の所在
    設問の法律は、国民投票により法律を成立させることを認めるものである。しかし、憲法41条は国会を「国の唯一の立法機関」と定めていることから、当該法律が同条に反しないかが問題となる。
    (1)同条にいう「唯一の」とは、具体的には、国会中心立法の原則と国会単独立法の原則の2つを意味する。
    国会中心立法とは、国の立法はすべて国会を通し、国会を中心に行われること、すなわち国会が立法権を独占することを意味し、国会単独立法とは、法律は両議院の可決のみで成立し、他の機関は参加しないこと、すなわち国会の手続きのみでなされることをいう。
    (2)本問法律は、国民が直接立法することを許容するものであり、この2つの原則のうち、国会単独立法に反するとも思われる。
    思うに、同条は、国民主権主義、権力分留主義からの双方の要請に基づくものであ...

    コメント0件

    コメント追加

    コメントを書込むには会員登録するか、すでに会員の方はログインしてください。