戦略論中間試験(シャープ)

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    資料紹介

    戦略論の中間試験の持ち込み資料になります。設問は次の二つです。最終評価はA+でした。
    1. シャープの垂直統合戦略を説明しなさい。
    2. シャープの事例を踏まえて、垂直統合戦略のメリット(利点)とデメリット(欠点)を説明しなさい。

    資料の原本内容

    中間試験(教場レポート) 実施要項
    経営戦略(1)、経営戦略(2)
    参照資料および講義内容をもとに、下記日程で実施する中間試験(教場レポート)で設問に解答すること。解答は、事実の羅列や媒体からのコピーではなく、自分の言葉で書くこと。資料から推測できることを含めても構わない。資料以外に知っている事実があれば、設問に関連する範囲で含めても構わない。この場合、情報の出所を明記すること。
    参照資料:
    日経ビジネスの記事、日経新聞の記事

    ※参照資料の一部は講義中にコピーを配布済み
    設問:
    シャープの垂直統合戦略について、次の問いに答えなさい。
    1.         シャープの垂直統合戦略を説明しなさい。(40点)
     垂直統合戦略とは、川上や川下の異質な事業と自社の事業を連結する戦略である。シャープの垂直統合戦略は、液晶パネルの生産に関する部品メーカーといった川上を統合する戦略であった。時系列で整理すると、市場が成長していた2008までは、業績が好調であった。これは、垂直統合戦略が成功したためである。しかし、以後の業績は悪化している。その理由を説明する前に、現状を自社・市場・競合の3つの視点から考察したい。3C(Company, Customer, Competitor)のフレームワークを切り口とすることで、同社の液晶テレビ事業に関する現状を理解する糸口となろう。

     第一に、自社(シャープ)は、垂直統合戦略を採用し、国内で液晶テレビの生産を続けてきた。その象徴が、亀山工場と堺工場である。この戦略のメリットは、コストダウン、生産力の強化、スピード、技術による差別化がある。一方でデメリットは、過剰な設備投資による余剰生産力を持つ恐れと、減価償却費の負担である。

     第二に、市場の状況は、悪化している。金額ベースでの落ち込みは既に始まっており。販売ベースも不透明である。日本は、地デジバブルとエコポイントによる需要の先食いにより冷え込むことが予想される。欧米も、財政悪化などを理由に需要が伸びていない。最後に、新興国も、中国における過剰な生産設備を背景に、厳しい商戦になるといわれている。さらに、コモディティ化が進むことで、日本企業が得意としてきた技術による差別化が難しくなってきている。

     第三に、競合は、同社と同じ垂直統合戦略を採用する陣営と、水平分業戦略を採用する陣営に大別される。前者は、サムスン、LG電子、パナソニックが代表例である。後者は、ソニーや東芝といった企業が代表的である。

     以上の3つの切り口から、市場環境の厳しさがうかがえる。垂直統合戦略のデメリットは、需給が逆転した際の余剰生産能力をどうするかである。現状では、同社は、余剰生産能力と減価償却費に悩まされていると予測される。したがって、シャープの垂直統合戦略は岐路に立たされているといえよう。
    2.         シャープの事例を踏まえて、垂直統合戦略のメリット(利点)とデメリット(欠点)を説明しなさい。(60点)
     シャープにおける垂直統合戦略のメリット・デメリットを再度整理すると、以下の通りである。メリットは、①コストダウン②生産能力③スピード④技術による差別化の4点になる。デメリットは、①生産能力の余剰、②減価償却費の負担になろう。

     では、なぜこのようなメリットやデメリットが発生するのだろうか。筆者は、①規模の経済のギャップ、②範囲の経済のギャップ、③管理方式のギャップが要因になっていると考えた。規模の経済性ギャップとは、2つの事業間における最適規模の相違である。範囲の経済のギャップとは、2つの事業を単一の事業にする困難度である。管理方式のギャップとは、異質な事業を統一的に管理することの難しさである。したがって、以上3つのギャップを小さくすることに努めれば、垂直統合のメリットが大きく・デメリットは小さくなるのではないか。

     では、シャープの液晶テレビ事業と液晶パネル事業を考えてみよう。液晶パネルは、携帯電話やパソコンなどの用途があるため、液晶テレビ事業よりも最適な規模が大きい可能性がある。ゆえに、液晶テレビ事業に規模を合わせることで、規模の経済のギャップがうまれる。また、コンビナートによって範囲の経済のギャップは少なく、恩恵を享受しているものと考えられる。管理方式のギャップについては、不明である。

     したがって、垂直統合戦略については、メリット・デメリットといった単純な二分法でくくれるものではない。要するに、規模の経済、範囲の経済、管理方式それぞれの組合せによって、メリット・デメリットが生まれ、垂直統合すべきかを判断すべきなのである。

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