監査論の期末試験対策メモになります。最終評価はA+でした。以下2つの視点から講義をまとめてあります。
I.監査人の実施する監査手続は、昭和41年と平成3年でどう変わったか?なぜかわったか?
II.企業の不正と財務諸表の虚偽記載を監査基準はどのように扱ってきたのか?
監査人の実施する監査手続は、昭和41年と平成3年でどう変わったか?なぜかわったか?
まず、昭和31年改正において、監査手続は、正規の監査手続とその他の監査手続にわかれていた。
正規の監査手続とは、25年発表のものでは、
政府その他の権威ある団体が
実務上発達した慣習のなかから
公正妥当な監査手続きとして
公式に選定したもの。
とされていたのが、昭和31年改正では、「公正妥当な監査手続きとして公式に選定」の文言が「通常実施すべき監査手続きとして選定したもの」に修正されていた。
その昭和31年改正が、昭和41年改正では、「正規の監査手続き(normal auditing procedures)」が通常の監査手続に訳し換えられたのが特徴である。その理由は、正規の監査手続きというと役所によって定められたイメージが強くなるからであるといわれる。内容も、通常の監査手続は「財務諸表監査において通常実施すべき監査手続」されてあり、「政府その他権威ある団体」という主語が削られている。
さらに、平成3年改正では、「通常の監査手続き」と「その他の監査手続き」という区分自体が廃止された。監査基準に準拠して、通常実施すべき監査手続きを実施することを要求するようになる。これは、特定の監査手続を想起させ、さらにそれを具体化したマニュアルをおくことに反対したためである。事実、通常の監査手続ついて項目が列挙されていた「第二 通常の監査手続」を廃止し、監査実施準則から削除され、マニュアルのような監査手続き一覧表は監査実施準則の規定から排除された。代わりに、審議会監査基準を頂点とした枠組みの中で、公正な監査慣行を踏まえた詳細かつ実践的な「監査業務指針」の設定を全面的に日本公認会計士協会に委ねられることになる。
また、通常実施すべき監査手続とは、
監査人が
公正な監査慣行を踏まえて
十分な監査証拠を入手し、
財務諸表に対する意見表明の合理的な基礎をえるために、
必要と認めて実施する
と表明されており、予め公式な判断を設定せず、監査人の判断に委ねようとしている点が特徴である。
以上から、一連の改正は、監査は職業的判断に基づくオーダーメイドであるべしという考えがあるように思える。
企業の不正と財務諸表の虚偽記載を監査基準はどのように扱ってきたのか?
昭和25年公開 では、
責任限定事項が非常に重要で、監査意見が否定的になる場合、不適正意見を差し控える代わりに 意見を表明しないとしていた。
さらに、昭和31年改訂 でも、
意見が無意義となる場合=意見差し控えとするとされていた。しかも、企業の採用する会計処理の原則及び手続きの変更についても記載をしない例外が認められていた。「但し正当な理由による期間利益の平準化は、企業の堅実性を得るために行われている場合を除く。」という文言である。これは、季節変動の激しい会社にとって一理ある一方、利益操作に目をつむることになりかねなかった。開示後発事象などについてのせる補足的説明事項が加わるものの、義務ではなかった。
昭和41年改訂では、やっと
期間利益の平準化が認められなくなる。さらに、補足的説明事項に継続性指摘事項として除外事項が加わる。しかし一方で、了解事項というものが付け加わった。これは経団連の抵抗によって作られ、除外事項が監査証明に何ら影響を与えず、不適正意見の表明にもつながらないことをうたっていた。開示後発事象については「記載しなければならない」、という義務表現になる。
平成3年改訂では、
補足的説明事項(開示後発事象)が特記事項(特に必要と認められる重要事項)へと変化した。しかし、「適正な表示」な「適正」の境界がどこにあるのかはっきりさせず、会計士と企業不正とのかかわりが不透明なままだった。
平成14年改訂の特徴は、
適正に表示しているかどうかは、実質的に判断
リスクアプローチを前提
合理的な基礎を確保できなかった⇒意見不表明
意見表明前の審査義務
の以上四点である。今まで記載事項は何を書くかを問題にしていたのを、どのように意見を形成すればよいのかという点を問題にするようにした。そして新たに、追記情報という強調事項も加わった。