社会科学研究レポート:APECに対する各国の考え方と対応

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    資料紹介

    社会科学研究の課題レポートになります。お題は次の2つです。
    (1)APEC 加盟国によって捉え方、関わり方が異なります。各国の捉え方、関わり方の特徴を整理しなさい
    (2)アメリカのAPECへの関わり方は、2009年初頭とそれ以降とでは異なると言えます。
    アメリカのジョン・ペイデン(John Paden)の論文を読み、現在のアメリカのAPECへの関わり方をまとめなさい。
    A評価でした。

    資料の原本内容

    社会科学研究レポート
    (1)APEC 加盟国によって捉え方、関わり方が異なります。各国の捉え方、関わり方の特徴を整理しなさい。
    ①日本

     日本は、1997年のアジア通貨危機において、APECはうまく対応できなかったと考えている。しかし、2008年の世界経済危機では、11月にAPECは素早く対応したと評価している。

    早期自発的分野個別自由化(EVSL)は失敗し、ウルグアイ・ラウンド合意(URA)も中途半端な結果だった。ドーハ個別計画(DDA)も停滞している。そのような環境下で、APECは現実路線に切り替え、自由化から貿易円滑や能力構築、国内改革へと重点を移した。また、G20首脳会議は、今後世界経済を管理する新しい枠組みになるであろう。ここで取り上げられる環境保全や災害復興、流行姿勢疫病防止、貧困削減などの議題は、APECがすでに取り上げられており、G20と緊密に連携していくと思われる。

    大阪行動指針を評価している。これによって、APEC様式に整合的な法制度を導入できた。大阪行動指針は、曖昧さや柔軟性があり、APECの様式に合っているとしている。自由化・円滑化を目指す4分野として、関税、非関税障壁、サービス、投資が挙げられている。残りの分野としては、基準認証、脆化手続、知的財産権、政府調達、商用移動がある。

     2010年に日本で開催されるAPEC会議は、ボゴール宣言から先進国を卒業させるべきだと考えている。理由は以下の通りである。アジア通貨危機以来APECの気運が低下している。地域統合の強化、規制改革、貿易円滑化行動計画Ⅱと多くの課題がある。IAP方式自体の合理化が必要である。APECの現実路線への転換を主張しているといえよう。

     
    ②アメリカ

    アメリカは、APECに対する考えについて、派閥に分かれている。それは、共同体建設派、戦略派、自由貿易派である。ただし、米国内において、APECはあまり認知されていないことに注意する必要がある。

    共同体建設派は、APEC創設期に支配的な役割を果たした。協力のペースに時間がかかることを理解しており、忍耐強い派閥といえる。加盟国の拡大を支持し、それぞれの国と米国の関係について議論された。さらに、アジア地域において米国を除いた共同体が現れることを恐れていた。しかしながら、加盟国を増やし、包括的な協議が行われることで、共同体建設が不明瞭で小さく、目標も米国と相いれないプロセス志向であるという問題を抱えている。

    自由貿易派は、1990年代半ばを支配した。ボゴール宣言を受けて、貿易分野で進展があったと考えている。ただし、アジア加盟グループ側が、「自発的」側面を重視したのに対して、米国側は、一部が互恵ベースの交渉とほぼ同じものとして好意的にみなす「一致した」部分に重点を置いた。1993年の首脳会議、1994年のボゴール宣言、1995年の大阪協働指針、1996年のマニラ行動計画、同年の情報技術協定といった相次ぐ成果によって、自由貿易派は活気づいた。しかしながら、日本が、食料分野において譲歩をしない姿勢を示すと、米国は、急に包括的な協議を求めるようになった。さらに、アジア側は、米国といった西側諸国が、APECを支配しかねないと危惧していた。1997年のアジア通貨危機にAPECが有効な手立てを打てなかったことに失望し、自由貿易派に影が差す事態となった。

    戦略派は、ジョージ・W・ブッシュ政権において主流となった。戦略派は、安全保障問題が議題に上ることを期待している。ところが、ASEANとAPECの初会合で、新しいプロセスを経済協力分野に限るとされてしまった。この主張は、オーストラリアや中国を中心としている。閣僚会議や首脳会議、二国間協議といった公式の多国間協議といった場を用いて、安全保障分野においても議論されるようになったが、もっと直接的で強引な議論を求めている。
    ③オーストラリア

    オーストラリアは、APECを日米と共に「三角経済関係」を構成し、APECにおいて主導的な立場を担っていると考えている。とくに、「開かれた地域主義」は、オーストラリアにおいて提唱された。貿易における差別化を排し、東アジア・太平洋諸国間の平等を保障することによって、開かれた地域主義の枠組みは、政治的要素を確保した。APECは、経時的功績だけではなく、政治的功績を示したとしている。さらに、二国間主義とFTAの動きは、ASEANの基盤とする原則に反するやり方であると指摘し、地域を全体として捉えない防御的で内向型の地域主義であると批判している。その中で、アジア太平洋共同体の構想を、オーストラリア首相のケビン・ラッド氏が提唱した。中国とインドの台頭といった地域経済・政治権

    力構造の変化は、このアジア太平洋共同体構想へと向かうべきことを示唆していると考えている。
    ④中国

    中国は、APECに肯定的で、太平洋両眼を結ぶ重要な機構であると考えている。APECの功績として、平均関税率の低下、商取引にかかるコストの低下、域内のモノ・投資・サービスの流れの増加、ビジネスの円滑化、をあげ、途上メンバー、新晃工業メンバー、先進工業メンバーを終結した比類ない地域集合体であると主張する。1997年のアジア通貨危機や2008年の金融経済危機、環境や気候変動といった新しい危機や課題についても、APECは積極的な役割をしたと評価している。これは、米国とは異なる考えである。開かれた地域主義を主張することで、APECは、多国間貿易体制のプロセス促進でも、中心的役割を果たすことができたとしている。貿易および投資の自由化および円滑化(TILF)と経済技術協力(ECOTECH)は、ASEANの二本柱だと提唱する。TILFを実現するためには、ECOTECHが必要であるが、ECOTECHへの関心と財源不足によって、うまくいってないと主張している。また、APECは、中国が最初に加盟した地域機構であり、中国の経験の蓄積に寄与した。2001年では、中国のリーダシップのもと、首脳会議や関連プログラムを成功のうちに開催、上海アコードといった文書に同意したと評価している。今後、APECにおいて積極的な活動が期待されている。
    (2)アメリカのAPECへの関わり方は、2009年初頭とそれ以降とでは異なると言えます。
    アメリカのジョン・ペイデン(John Paden)の論文を読み、現在のアメリカのAPECへの関わり方をまとめなさい。
     APECにおいて重視する国が、日本から中国へと移り変わっている。チャールズ・モリソンの2009年の論文では、APECにおける日本の影響力拡大を危惧していた。たとえば、米国内の共同体建設派は、日米貿易摩擦の経験から、日本の改革を促す仕組みとしてAPECに期待していた。自由貿易派は、ODAを通じて日本がAPECを買収している事実に対し、懸念を抱いていた。戦略派は、日本が米国の権益を損ねるほどAOECで主導的な影響を与えることを恐れた。 ところが、2014年のジョン・ペイデンらの論文では、一貫して中国との関係について述べられている。このことは、米国がAPECにおいて重視する相手が、日本から中国へと変わったことを示唆しているといえるだろう。また、中国の存在感の増加は、米国のAPECの重視につながっているのかもしれない。v
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