【刑法総論】中央大学法学部 通信課程
2020年度 第3課題 合格レポート 〔評価:A〕
<問題>
【第3課題】
〔設問〕
Aは、殺人の故意でBに対して発砲したところ、弾はBの肩を貫通し、Bに傷害を負わせ、さらにたまたま通りかかったCに命中し、Cを死亡させた。
Aの罪責を論ぜよ。
第3課題
〔設問〕
Aは、殺人の故意でBに対して発砲したところ、弾はBの肩を貫通し、Bに傷害を負わせ、さらにたまたま通りかかったCに命中し、Cを死亡させた。Aの罪責を論ぜよ。
〔解答案〕
Aの罪責について
1.AがBに対して発砲し傷害を負わせた行為につき、殺人未遂罪(刑法203条、199条)の成否を検討する。
(1) まず、AはBに対して殺人の故意で発砲していることから、人の生命に対する現実的な危険があり、殺人罪(刑法199条)の実行行為に該当する。
(2) しかし、Bは傷害を負ったものの死亡しなかったことから、Aには殺人未遂罪が成立する。
2.次に、Aが発砲した弾丸が通りかかったCに命中しCを死亡させた事実につき、Aへの殺人罪または過失致死罪(刑法210条)の成否を検討する。
(1) 刑法38条1項は、行為者の故意があることを犯罪成立要件としているので、AがCを死亡させた点につき、故意の成立可否が問題となる。
(2) 行為者が行為の当時に認識していた犯罪事実と実際に発生した事実とが一致しない場合を、事実の錯誤という。本件では、Aは、Bを殺害する意思で発砲したところ、認識したものと...