一 法律上人の死亡
(1)死亡
平成9年の「臓器移植法」の成立により、現在日本では脳死と心臓死という2つの死の定義が
存在する。
(2)認定死亡(戸籍法89条)
水難、火災、戦争などで死亡したことは確実だが最後まで遺体を確認できない場合に、取り調
べにあたった役所が死亡の認定をして戸籍上一応死亡として扱うもの。効果は失踪宣告とほぼ
同じだが本人の権利能力を奪うものではなく、本人が生きていればその死を前提とした権利変
動は手続抜きで無効となり得る。
(3)失踪宣告
①定義:不在者の生死不明の状態が一定期間継続した場合に、一定の条件の下に裁判所がその者
が死亡したものとみなす旨の宣言をして、その者をめぐる法律関係を安定させる制度。
「普通失踪」と「特別失踪」という2つがある。
②趣旨
不在者の生死不明が長く続いた場合の夫婦関係を例に挙げて考えてみよう。夫が生死不明のま
までは、妻はいつ帰るともわからない夫を待ち続けなければならない。しかも、夫がいない以上、
離婚も出来ないから、再婚しようとしても重婚になってしまう。また、夫の財産もいつまでたっ
ても処分できないことになる。
そこで民法は一定条件の下で不在者が死亡したと法的にみなすことで、周囲の法律関係を早期に
安定化しようと考えたのである。
③失踪宣告の要件(30条)
(a)不在者の生死がはっきりしないこと。
(b)生死不明の状態が一定期間継続すること。
(ⅰ)普通失踪の場合:不在者の生死が7年間わからないこと。
Ex.夫が家出をしてその生死が7年間わからない場合。
(ⅱ)特別失踪の場合:危難に遭遇したものが、危難の去った後1年間生死不明なこと。
Ex.墜落していた飛行機に乗っていた者や沈没した船に乗っていた者の生死が、事故
発生から1
年間わからなかった場合。
(c)利害関係人の請求
<定義>利害関係人:失踪宣告により法律上の利害関係を有する者のこと。
Ex.再婚について利益を持つ配偶者、相続について利益を持つ法定相続人など。
(d)公示催告
④失踪宣告の効果(31条)
元の住所を中心とした法律関係は、失踪宣告を受けた者が死亡したのと同じ扱いを受ける。
つまり、相続が開始され、婚姻の解消によって配偶者は再婚できるようになる。
しかし、あくまで「元の住所を中心とした」法律関係が変化するだけで、失踪者本人の権利
能力が無くなってしまう訳ではない。例えば、失踪者は別の場所で自由に物を買うことも出
来るのである。
死亡の効果を阻止するには、失踪宣告を取り消さなければならない。失踪者が生きている
ことが判明しても、当然に失踪宣告が取り消されるわけではないのである。
⑤失踪宣告の取消(32条)
(a)意義
失踪宣告をされた本人が生きていることが明らかになったり、失踪宣告でみなされた時期と
異なる時期に死亡したことが明らかになったりした時には、失踪宣告を取り消して事実に沿っ
た扱いをする必要がある。
(b)要件
(ⅰ)失踪者が生存していること。または危難の去った時と異なる時に死亡したこと。
(ⅱ)請求権者(本人・利害関係人)による宣告取消の請求があること。
(c)効果
原則:失踪宣告ははじめからなかったのと同じになる。よって権利義務の変動も生じなかった
ことになる。(これを遡及効という)。
例外:失踪宣告取消によって、それまでになされた全ての財産移転行為(相続など)が無効にな
ると、第三者に不測の損害を与えかねない。そこで例外として、
(ⅰ)失
一 法律上人の死亡
(1)死亡
平成9年の「臓器移植法」の成立により、現在日本では脳死と心臓死という2つの死の定義が
存在する。
(2)認定死亡(戸籍法89条)
水難、火災、戦争などで死亡したことは確実だが最後まで遺体を確認できない場合に、取り調
べにあたった役所が死亡の認定をして戸籍上一応死亡として扱うもの。効果は失踪宣告とほぼ
同じだが本人の権利能力を奪うものではなく、本人が生きていればその死を前提とした権利変
動は手続抜きで無効となり得る。
(3)失踪宣告
①定義:不在者の生死不明の状態が一定期間継続した場合に、一定の条件の下に裁判所がその者
が死亡したものとみなす旨の宣言をして、その者をめぐる法律関係を安定させる制度。
「普通失踪」と「特別失踪」という2つがある。
②趣旨
不在者の生死不明が長く続いた場合の夫婦関係を例に挙げて考えてみよう。夫が生死不明のま
までは、妻はいつ帰るともわからない夫を待ち続けなければならない。しかも、夫がいない以上、
離婚も出来ないから、再婚しようとしても重婚になってしまう。また、夫の財産もいつまでたっ
ても処分できないことになる。 ...