司法試験過去問検討 昭和 59 年第1問
第一 BがAの代表者として本件不動産をCに売り渡した場合
一 所有権の帰属について
1 Aは権利能力なき社団であるため、A自身は本件不動産の所有権を有しない。そこで、本件不動産の
帰属が問題となる。
思うに、権利能力なき社団は、社団としての実体を備えているから、社団に準じた構成をすべきであ
る。
そこで、本件不動産の帰属についても、実体に即して社団法人と同様に考えて、Aの構成員に総有的
に帰属するものと解する。
2 そして、BはAの構成員を代表して行為する代表者であるから、民法53 条の類推適用によって不動産
の売買契約について代表権を有すると考える。このように解すると、本件契約は有効であるのが原則で
ある。
3 しかし、Bは私利を図る意図を有していることから、Cがその意図を知っていた場合についてまで本
件契約を有効とすることは妥当でない。
そこで、かかる場合に契約の効果は本人に有効に帰属しないとすることはできないか。
この点、理事は法人に効果帰属する意図をもって行為しているから、内心的効果意思と表示との間に
不一致はなく、9...