主権免除とは、国家がその意思に反して、外国の裁判所の管轄権や外国当局による執行などに服することはないとするものである。国家が他国の裁判所において被告として司法管轄権の行使の対象となることを免除されるのが原則で、主権が免除の根拠であることから主権免除、あるいは主に免除されるのが裁判権の行使であるから裁判権免除とも呼ばれる。
主権免除をめぐっては絶対免除主義と制限免除主義の2つの学説の対立がある。絶対免除主義とは、国家の行為であれば全て免除されるとするものである。制限免除主義とは、国家の行為を主権的行為と業務管理行為を区別し、前者についてのみ免除を認めようとする立場のことである。制限免除主義を取る場合であっても、免除の適用範囲を決定する基準については、さらに2つの学説がある。対象となる国家活動の結果生じる法律関係の性質を基準とする「行為性質説」と、対象となる国家活動の目的を基準とする「行為目的説」である。現代では、行為性質説が有力である。行為目的説については、現代国家の全ての活動は社会の公共目的に奉仕しているといえることから、国家に私的性質の行為がありうるか疑問であり、国家がたとえ商取引...