中央大学通信教育の第二課題にて、評価Aを頂いたレポートです。
ご参考になれば幸いです。
事実の錯誤とは、犯罪事実に関する錯誤である。すなわち、行為者が認識した事実と客観的に実現した事実との間の不一致のことをいう。大きくわけて2つに分類することができる。1つは、具体的事実の錯誤と抽象的事実の錯誤である。前者は、客観的事実と主観的意識のずれが同じ犯罪類型であり、後者はこのずれが異なる犯罪類型にまたがる場合のことをいう。このとき、認識と事実がどれだけずれた場合に行為を否定するべきかを決定する基準にいくつか説がある。現在では、認識した構成要件と実現した構成要件とが同一である場合に行為犯の成立を認める「法的符合説」と具体的な被害者ごとに別個の犯罪事実が存在すると考え、その犯罪事実の行為があったかどうかを基準とする「具体的符合説」が有力とされている。2つ目の分類の仕方は、客体の錯誤、方法の錯誤、因果関係の錯誤の3つの分け方である。課題において、①は客体の錯誤、②は方法の錯誤、③は抽象的事実の錯誤が問題と考えられる。
客体の錯誤
学説上、犯罪成立要件とは関係のない事実ならば、具体的な被害者の性質を知らなくてもその事案と関係のない事実ならば、これを知らなくてもその錯誤は考慮されない...