博物館資料論レポート
『大エルミタージュ美術館展を博物館資料論の目線で』
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1、大エルミタージュ美術館展の概要
2006年10月19日から同年12月24日まで東京上野の東京都美術館にて、企画展「大エルミタージュ美術館展」が行われた。また現在、2007年1月5日から3月4日までの間、名古屋市美術館にて名古屋展が、その後2007年3月14日から5月13日には京都市美術館にて京都展が巡回展として行われる予定である。主催は東京都美術館、名古屋市美術館、京都市美術館、中京テレビ放送、日本テレビ放送、読売新聞社、エルミタージュ美術館、後援は外務省、文化庁、ロシア連邦大使館、日本テレビ文化事業団である。本展の監修者は成城大学の千足伸行氏であった。エルミタージュ美術館はおよそ300万点もの所蔵品を誇る世界最大の美術館のひとつであり、1762年から34年間、ロシアを統治した最後の女帝エカテリーナ二世が収集したコレクションから成る国立美術館である。「大エルミタージュ美術館展」は、その膨大なコレクションの中から、「都市と自然と人びと」をテーマに、15世紀のヴェネツィア派から20世紀の近代絵画まで、400年にわたるヨーロッパ各国の75人の画家による油彩画80点を展示してある。尚、本展の広報用作品として、ポール・ゴーギャン《果実を持つ女》、ピエール=オーギュスト・ルノワール《扇子を持つ女》など13点の出展作品が使われていた。
2、資料の収集について
美術館・博物館の活動の基礎となるのは、収集または保存された作品や資料である。本展覧会は東京都美術館80周年記念として行われ、その収集には細心の注意と様々な苦労があったことだろう。資料の収集には大きく分けて8つの方法がある。
1、採集 2、発掘 3、寄贈 4、交換 5、寄託 6、借入 7、購入 8、制作である。
小さな展覧会の場合、学芸員個人が自身で採集したり、周囲の住民や関係者、館外の研究者や同行者の情報などから資料を得たりすることもあるが、大規模なものであると博物館側が積極的に収集活動を開始し、所有者との話し合いにより購入または貸与の契約を交す場合もある。今回の企画展は名前の通り全てエルミタージュ美術館から借入の契約を行ったということだろう。本展覧会の東京展が10月16日から、京都展が5月13日までということから、比較的長期に渡る期間の借入ということが分かる。その運送には、ホームページ等に記載されている情報から、フィンランド航空、ルフトハンザ カーゴAG、ルフトハンザ ドイツ航空、日本運通、JR東日本が挙げられており、運送には飛行機及び鉄道、宅配便などが使われていた。巨匠の作品も多いだけに、その運搬には細心の注意が払われたことであろう。私が観に行った際も、幸いにも運搬・搬入による破損等は無かったようであった。
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尚、今回は数多くのコレクションの中から「都市と自然と人びと」をテーマにヴェネツィア派からモネ、ゴーギャン、ルノワール、ピカソなど幅広く油彩画80点が選ばれ展示された。
3、資料の分類について
博物館資料と一言にいっても、そこには考古学資料・歴史資料・文献資料・民俗資料・美術資料などをはじめとする人文系資料や、動物資料・植物資料・地学飼料などの自然系資料と、各博物館がそれぞれの専門領域とする範囲内で多岐に及ぶ資料が介在し合っている。これらの各学問分野の資料は、博物館に収蔵されることにより一般に博物館資料と呼ばれるものとなり、博物館に収蔵された考古学資料は博物館資料と認識され
博物館資料論レポート
『大エルミタージュ美術館展を博物館資料論の目線で』
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1、大エルミタージュ美術館展の概要
2006年10月19日から同年12月24日まで東京上野の東京都美術館にて、企画展「大エルミタージュ美術館展」が行われた。また現在、2007年1月5日から3月4日までの間、名古屋市美術館にて名古屋展が、その後2007年3月14日から5月13日には京都市美術館にて京都展が巡回展として行われる予定である。主催は東京都美術館、名古屋市美術館、京都市美術館、中京テレビ放送、日本テレビ放送、読売新聞社、エルミタージュ美術館、後援は外務省、文化庁、ロシア連邦大使館、日本テレビ文化事業団である。本展の監修者は成城大学の千足伸行氏であった。エルミタージュ美術館はおよそ300万点もの所蔵品を誇る世界最大の美術館のひとつであり、1762年から34年間、ロシアを統治した最後の女帝エカテリーナ二世が収集したコレクションから成る国立美術館である。「大エルミタージュ美術館展」は、その膨大なコレクションの中から、「都市と自然と人びと」をテーマに、15世紀のヴェネツィア派から20世紀の近...