個別的労働法、黙示の労働契約というテーマで、約10000字で論じています
「黙示の労働契約について」
第1章 問題の所在
労働契約法第6条によれば、労働契約は、労働者が「使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払う」ことを合意することによって成立するのが原則であるが、それ以外にも、黙示の労働契約の合意があったとして、その成立・存在が認定されることがある。
この問題は、事業場内下請問題などと呼ばれて古くからあり、当初は労働者の主張が認められ、黙示の労働契約の成立・存在が認定される裁判例が多かった。
しかし、昭和60年の労働者派遣法制定によって、労働者供給事業の一部を労働者派遣概念で括り一定の規制の下に合法化した。その後、労働者派遣という形式は、企業の雇用リスク回避の隠れ蓑として使用されることが増え、社会問題化している。派遣の枠に納まらない、平成20年のリーマンショック以降の厳しい景気情勢の中で、派遣切りが多発し裁判も急激な増加を見せた。
そのような状況下で、松下プラズマディスプレイ事件最高裁判決やいよぎんスタッフサービス事件高松高裁判決において、偽装請負のケースで黙示の労働契約の成立が否定されたことについては、その意義が評価されると...