インターネット空間は偶有性の高い空間である。インターネット空間ではデジタル記号が生成・交換される。アナログな記号は、記号ではあっても、個々人の実経験をもとにイメージを形成する、いわば身体性を帯びた記号である。しかし、インターネット空間におけるデジタル記号は、現実には存在しえないものをイメージとして共有することを可能とする。たとえば、「スレンダーな美人」という言語による表現がどのような人物かというのは、基本的には、その人が今まで見たこと、会ったことのある女性の中からイメージが生成される。仮にその人が、人生の中で「スレンダーな」と形容されうる人物を一度も目撃したことが無ければ、「スレンダーな美人」という言語表現をその人が理解、イメージすることはできないであろう。しかし、インターネット上では現実には存在していないような、もしくは、存在していたら「不健康」と形容されかねないような、身長180cm、体重35kgなどという女性が存在しうる。つまり、インターネット上でやり取りされる記号は生活の必然を離れたものであるから、インターネット空間はどういうものが現れるかわからない、偶有性の高い空間であるとい...