「適応・不適応の心理的機制、またそれらからひき起こされる特徴的行動について説明せよ」 ○適応の心理的規制から引き起こされる特徴的行動 ○抑圧 心的エネルギーをそのまま発散させると、不安や破局を起こす恐れがある時、自我がそのような不安や破局を起こしそうな衝動やそれに結びついた観念や感情を無意識の中に押し込める働きをいう。例えば、フロイトの研究では、患者は姉の遺体を前に義兄と2人きりになった時に、「これで義兄の奥さんになれる」という空想をし、その瞬間にこの道徳的に耐え難い観念を意識から追い払い、義兄と結婚したいという願望と、それらに対する罪悪感を「抑圧」していたことが明らかになった。彼女のヒステリー症状(下肢の痛み、失立、失歩)は抑圧された心的興奮が運動系、知覚系を通して身体的なものに転換されたもので、義兄に「介抱されたい、支えられたい」という無意識的な願望と罪悪感からの逃避、自己処罰とを同時に象徴していたものと考えられる。 ○合理化 自己の劣弱を認めると不安や破局に陥るような時に、責任を他人に転嫁したり、正当化するような理由付けを行って自分を守ろうとする機制である。イソップ童話の「すっぱいブドウ」はこの例であり、日常生活でも、他人と対人関係がうまく結べない時に、相手のせいにして自分を正当化するなど、その例は多い。 ○補償 もともとはアドラーによって明確にされた概念であり、それは「劣等感」を克服して、自らの弱点を補おうとする心の動きを意味している。例えば、どもりを克服して雄弁家となったデモステネスが挙げられる。あるいは「劣等感」を隠す装いをこらすという型もあり、これはたとえば、男らしくないという劣等感を「補償」するためにひげを生やすような場合である。一方、ユングは、人の心は意識と無意識の相補関係によって全体的な均衡・調和を保つものと考え、意識の態度があまりにも一面的になる時、それを相補う動きが無意識に存在することを強調した。たとえば、ある男性が「男らしさ」(アニムス)をあまりに強調しすぎる場合、無意識に潜むコンプレックスである「女らしさ」(アニマ)が活性化し、女性の問題でトラブルを起こし、「女性」なるものに真に直面しなければならなくなる、といったことがある。 ○代償 本来の目的が得られない時、獲得しやすい他の目標によって満足する機制である。この例として、「高価なピアノは買えないので、オルガンで我慢する」などである。 ○置き換え フロイトが神経症の症状形成機能として、また夢の心的加工として取り上げた自我の防衛機制の1つである。欲動の「抑圧」と不安の「置き換え」によって動物恐怖を呈した症例として、小児ヒステリー「症例ハンス」が挙げられる。ハンスは母親への愛情、父親に対する嫉妬からくる攻撃的態度、および父親に愛情を抱くといったエディプス的葛藤状況におかれていた。父親への攻撃的衝動の罰として、去勢される不安を抱き、父親に対する恐怖は自分自身に対する父親からの攻撃へと転化した。さらに、ハンスの父親に対する恐怖は、馬に対する恐怖へと対象を他に「置き換え」て表現されるに至った。この置き換えによって、ハンスは馬に対して危険と不安を限定し、外出する自らの行動を制限した。 ○反動形成 自我にとって受け入れがたい本能衝動の意識化を防ぐために、その衝動と反対方向の態度を過度に強調する機制のことである。たとえば、幼い子どもに弟妹が生まれると、母親を自分から奪った憎むべき赤ん坊に対して、かえって優しく可愛がり、良い子ぶった振る舞いをする場合などがある。 ○投影(ある
「適応・不適応の心理的機制、またそれらからひき起こされる特徴的行動について説明せよ」 ○適応の心理的規制から引き起こされる特徴的行動 ○抑圧 心的エネルギーをそのまま発散させると、不安や破局を起こす恐れがある時、自我がそのような不安や破局を起こしそうな衝動やそれに結びついた観念や感情を無意識の中に押し込める働きをいう。例えば、フロイトの研究では、患者は姉の遺体を前に義兄と2人きりになった時に、「これで義兄の奥さんになれる」という空想をし、その瞬間にこの道徳的に耐え難い観念を意識から追い払い、義兄と結婚したいという願望と、それらに対する罪悪感を「抑圧」していたことが明らかになった。彼女のヒステリー症状(下肢の痛み、失立、失歩)は抑圧された心的興奮が運動系、知覚系を通して身体的なものに転換されたもので、義兄に「介抱されたい、支えられたい」という無意識的な願望と罪悪感からの逃避、自己処罰とを同時に象徴していたものと考えられる。 ○合理化 自己の劣弱を認めると不安や破局に陥るような時に、責任を他人に転嫁したり、正当化するような理由付けを行って自分を守ろうとする機制である。イソップ童話の「...