嗅覚の計測
嗅覚はにおいに対する感覚で、多くのひとは数千種類のにおいをかぎ分けることができる。鼻腔内の嗅粘膜には基底細胞、支持細胞とにおいを感じる嗅細胞(直径40~50ミクロン)があり、人では約4000万、においに敏感な犬では約10億の嗅細胞がある。嗅細胞の先端からは10~30本の線毛(100~150ミクロン)が生えており、におい物質にふれることによってそのにおいに対する感覚が生じる。線毛にはにおいに対する受容器がある。嗅細胞は外界にさらされている神経細胞であり、2、3週間の寿命しかありませんが、基底細胞が分化して新しい嗅細胞となります。
図1 鼻腔の断面図
嗅覚は、生体計測という立場から考えると、およそ数量化しにくい感覚領域である。人間の感知しうる気体物質の濃度はきわめて微量であり、ppm又はppbで表現するが、純粋にその物質だけの単品香料であっても製造の過程で微量に他の物質が混在する。そのため同じ香料を用いても、濃度によってにおいの質が変化するという厄介な問題が常にある。ppmはpart per million、ppbはpart per billion の略。Million は100万を、billionは10億を意味するから、ppmは100万分の1、ppbは10億分の1を示す単位 として、極微量の濃度や割合を表すときに使用されている。最近は、さらに分析技術が進歩して、ppt(part per trillion)という1兆分の1の濃度で存在している物質も、確認できるようになった。
嗅覚の計測法について。
嗅覚テストのことをオルファクトメトリー(Olfactometry)という。計測法には心理・生理計測法と物理計測法がある。
心理・生理計測法
においを感じている人間が測るため、ある意味では確かだが、測定結果の表現の仕方に問題がある。計測する場合、嗅覚の特性を考慮する必要がある。
嗅覚の特性
鋭敏さ:匂いに対する感度。大多数のにおいに対しては器械よりも人の嗅覚のほうがより鋭敏である。高齢になるほど感覚が鈍くなる。
疲労しやすさ(順応):試験を続けるうちににおいをあまり感じなくなること。あるにおいに対しては嗅覚が疲労しても、ほかのにおいは普通に感じることができるという特性もある。
個人差:嗅覚の個人差はかなり大きく、すべての嗅覚を失った人、ある程度減退している人、正常な人、嗅覚過敏な人と人ごとに違っている。しかし嗅覚が鋭敏と自覚している人でも多くの匂いを使ってテストしてみると、すべてのにおいに鋭敏であるとは限らない。一部のにおいに鈍感な人も多い。その極端な場合、一部の匂いだけをまったく感じない人もいる。嗅盲という。
閾値の変動:嗅覚を起こすためのにおい物質の最小量を嗅覚の閾値という。体の変調(激しい疲労、栄養失調など)により嗅覚が低下すること。
においの打消し、隠蔽、変調:物質の間で化学反応を起こさせて無臭にする。あるにおいを他のにおいによって隠蔽する(マスキング)。あるにおいAに他のにおいBを付加することによってAのにおいの質を変え、好ましい良いにおいにする方法も考えられている。
においの記憶:あるにおいの名前を聞いてそれを意識の中で実感として感じることは一般にはできない。
においの場合、色などとは違い現在のところ標準のにおいが定まっていない。このような状態ではあるが、次のような計測法が用いられている。
ツワーデマーカ(Zwaardemaker)のオルファクトメータ(嗅覚計)
これはガラスの二重管からできていて、外管の内側ににおい物質を塗っておき、
嗅覚の計測
嗅覚はにおいに対する感覚で、多くのひとは数千種類のにおいをかぎ分けることができる。鼻腔内の嗅粘膜には基底細胞、支持細胞とにおいを感じる嗅細胞(直径40~50ミクロン)があり、人では約4000万、においに敏感な犬では約10億の嗅細胞がある。嗅細胞の先端からは10~30本の線毛(100~150ミクロン)が生えており、におい物質にふれることによってそのにおいに対する感覚が生じる。線毛にはにおいに対する受容器がある。嗅細胞は外界にさらされている神経細胞であり、2、3週間の寿命しかありませんが、基底細胞が分化して新しい嗅細胞となります。
図1 鼻腔の断面図
嗅覚は、生体計測という立場から考えると、およそ数量化しにくい感覚領域である。人間の感知しうる気体物質の濃度はきわめて微量であり、ppm又はppbで表現するが、純粋にその物質だけの単品香料であっても製造の過程で微量に他の物質が混在する。そのため同じ香料を用いても、濃度によってにおいの質が変化するという厄介な問題が常にある。ppmはpart per million、ppbはpart per billion の略。Million は10...