『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
事例で学ぶ民法演習20
第一.小問1について〜複数の抵当権との関係〜
1.(1)について
(1)本件において、法定地上権(民法(以下、特記無き限り省略する。)388条)は成立するか。
(2)本問の前提として、法定地上権の成立要件は、①抵当権設定当時、建物が存在すること、②抵当権設定当時、土地・建物の所有者が同一であること、③土地、建物の一方に抵当権が設定されていること、④競売の結果、土地と建物が別個の所有者に帰属すること、である。
本件では、②の要件が問題になる。すなわち、土地について1番抵当権が設定された当時、建物所有権は別人に帰属していたが、2番抵当権設定時には土地・建物所有権が同一人に帰属するに至った場合にも、法定地上権は成立するか。
(3)確かに、2番抵当権を基準にすると要件を充たしており、法定地上権が成立するとも思える。
しかし、1番抵当権を基準とすると、要件を充足しておらず、1番抵当権者は法定地上権という重い負担は生じないものとして土地を評価しており、法定地上権成立を認めるとかかる期待を害する。
したがって、法定地上権は成立しない( 最判平2・1・22)。
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