『事例で学ぶ民法演習』の解答です。本書は、北海道大学の教授陣による民法の演習書です。本書は、家族法を除く財産法の全てを網羅しており、旧司法試験や予備試験レベルの中文事例問題で構成されています。
事例問題形式での民法演習書として本書の問題は完成度が高く、基本論点を総浚いするとともに、判例に則した見解で記述がなされており、現時点で、民法科目最高の問題集であります。
充実した解答のついていない本書において、本解答は貴重なものであると思います。特に,答案を書くにあたり,受験生が苦手とする「事実の評価部分」が充実していますので、司法試験対策には非常に有用な内容に仕上がっております。
そして、本解答は司法試験合格者に添削をしてもらった上で作成しているため、信頼できる内容になっていると考えます。 また、発展的な問題については、参考文献や参考資料を引用した上で作成もしておりますので、学習の便宜上、有意義な内容となっております。
第4問
1 小問1
Dは、Cへの請求について、Aは自身が本件絵画の所有者である旨の主張ができるか。
(1) 本件絵画は、AからB、BからCへと売却されている。しかし、AB間の売買契約の意思表示は、債務超過のAが債権者の追及を逃れるために仮装したものであって、ABが「通じて」した「虚偽の意思表示」であるから、無効である(94Ⅰ)。そうすると、Bとその譲受人Cは本件絵画について所有権を有していなかったこととなり、DC間の賃貸借は他人物賃貸借であったこととなる(559、560)。そして、AがDに対して本件絵画の返還を請求すれば、CD間の賃貸借契約はCの履行不能となって終了する。そのため、Aの請求は認められるとも思える。
もっとも、Cが「善意」の「第三者」(94Ⅱ)にあたるならAはCに虚偽表示無効を対抗できない。Cは「第三者」にあたるか。
同項は、虚偽の外観を信頼した者を保護する規定である。そこで、当事者及びその包括承継人以外の者で、虚偽表示による法律行為の存在を前提として、新たに独立した法的な取引関係に入った者をいう。
そして、かかる趣旨から、「第三者」は、当事者に対し直接取引関係に入...