①被害者の承諾の意義
②被害者の承諾の要件
③被害者に承諾についての判例の立場
④被害者の承諾についての自身の立場
⑤違法性の意義・本質と被害者の承諾論との関係
『刑法総論』(A04B)<課題1> 教科書執筆者:
①被害者の承諾の意義
被害者の承諾とは、刑法35条「法令又は正当な業務による行為は、罰しない。」に位置付ける見解が有力である。しかし、被害者が法益保護を放棄するという点(保護法益欠如の原則)において極めて特徴的な違法阻却事由であるため通常の正当行為(35条)の中に収めることには疑義がある。その特異性に鑑みて、被害者の承諾は超法規的違法阻却事由と解すべきという見解もある。ただし、被害者の承諾は保護法益の欠如という結果無価値の観点のみによって把握されるべきではなく、その被害者の承諾に基づく行為が法の理念に合致する社会的相当行為であるか否かという行為無価値の観点によっても把握されるべきである。また、被害者の承諾は、国家的法益・社会的法益には関わりがなく、個人的法益に関するもので、財産については全面的に効果を有するが身体については見解の対立もある。
②被害者の承諾の要件
被害者の承諾が違法阻却事由とされるためには、承諾者が判断能力を備え、承諾が真意に出たものであり、その承諾が行為時に存在し、かつ、承諾内容が客観的に是認され得るような社...