EU統合はそこに暮らす人々、ひいては世界の人々の幸福にどのような貢献を果たすと考えられるか。またそれがもつジレンマとは何か。最も基本的な目的と具体的な発言状況を要約して述べよ。
まずEU発足までの流れを見ていくと、1992年、EC12か国が共通の経済的市場を構築するという市場統合がほぼ達成され、人・物・金・サービスの域内自由移動が実現された。1993年には統合をさらに一段階進めたマーストリヒト条約が締結され、経済だけでなく、通貨・政治における統合が進められた。そしてヨーロッパにおいてこうした統合を行う上で問題となるのは「格差」と「民族」の二つである。EUでは格差の是正を目的のひとつとしているが、後進国は厳しい基準に順応しなければいけない反面、先進国のシステムの恩恵を受けることができ、経済的に豊かになる可能性が開ける。一方で先進国は、統合によりマーケットが広がる反面、すでに自国内でうまくいっている経済、政治、福祉などのシステムを統合により劣化させなければならない危険性をはらんでおり、一概にメリットが享受できるとは限らず、先進国、後進国どちらにもジレンマが存在する。またヨーロッパでは非常に...