コンスタン『アドルフ』の中の悪

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    資料紹介

    コンスタン『アドルフ』の中の悪
    (序)
    【悪】とは道徳的に良くないこと、不正を行うことをいう。生きている限り人間の中には、度合いの違いはあるものの少なからずこの【悪】というものが存在する。
    19世紀前半に活躍した作家、バンジャマン・コンスタン著『アドルフ』は1816年に発表された。この物語は、若い青年アドルフが、伯爵の情婦であるエレノールに恋をし、成就し、さらに成就後の倦怠からエレノールの死まで、細かな心理描写で描かれたものである。アドルフはエレノールを、エレノールはアドルフを苦しめていることに常に苦悩するのだが、恋というものにはそれはつきものである。では、意識的せよ無意識にせよ【悪】というものはどうだろうか。
    本論では、この『アドルフ』を【悪】という視点から、引用をもとに具体的に論じていくことにする。
    第一章:アドルフの軽率な行動
    まずこの章では、アドルフのその軽率な行動にいて述べることにする。
    第2章では、アドルフは倦怠の日々を過ごしていた。そんな中、友人の恋の成就に羨ましさを感じている。友人にできて自分にできないのはおかしい、とあたかも一種のゲームのように恋愛相手を探していくのである。そして、P伯爵の情婦エレノールと出会い、アドルフは彼女こそ自分の恋の相手にふさわしいと思い込むことになる。
    「この欲求の中には、確かに多分の虚栄心があったに違いないが、といって単に虚栄心だけではなかった。」「私の胸が恋を求め、私の虚栄心が成功を求めていたちょうどその
    時・・(後略)」。この部分を見ると弁明は入っているものの、虚栄心があったのは確実であることが分かる。更に、うぬぼれの自信を持ち、エレノールに告白をして玉砕するや否や、
    「一時間前には得意になって見せかけていた恋を、たちまちほんものの恋として感じるような気がした。」と、記している。しかしそんなわけはない。真実は、成功すると思っていた計画が失敗に終わり、得られるはずだったものが得られなかったために、単にアドルフは悔しかったというのが妥当であろう。ただ彼自身それを認めたくなかったのである。自分の正当化のためにこの恋を本物に仕立てあげ、エレノールに再チャレンジする理由に使ったのだ。
     「私はただ成功することだけを望んでいるのだ、やめようと思えば苦もなくやめられる一つの試みにすぎないのだ、と自分に言い聞かせたあのときのことが、今また思い出された。」 ここではっきり述べているように、エレノールを自分のものにすることが一つの目標になっていたことが分かる。その後、人間の不思議な心理により本当にエレノールに恋心を抱くことになるが、最初の動機の不純さは、自覚がない【悪】ではないだろうか。
    第二章:アドルフの心の変化
    以上ごく簡単ではあるがアドルフの軽率な行動の一部を紹介した。ではこのような行動から生まれた恋がどのように変化していくのかを具体例を挙げて説明していくことにする。
     エレノールはアドルフの甘い言葉にすっかり酔いしれ、いつしか心を奪われることになる。エレノールはアドルフに常に会いたがった。もちろんアドルフもそうだったが、それが少し度を越し始めたことから、幾日かたった頃アドルフの心に変化が表れる。
    第4章では「私の足取りがすべて前もってつけられていたり、私の時間がすべてきめら
    れていたりすることは、ときとして私には不便なのであった。」と、ここで不満をもらしたかと思えば、「もはや彼女は一つの目的ではなくて、一つの束縛となっていた。」とまで言ってのけ、更に、「まだ半年も、窮屈と遠慮の生活がつづくのか」と述べている

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    コンスタン『アドルフ』の中の悪
    (序)
    【悪】とは道徳的に良くないこと、不正を行うことをいう。生きている限り人間の中には、度合いの違いはあるものの少なからずこの【悪】というものが存在する。
    19世紀前半に活躍した作家、バンジャマン・コンスタン著『アドルフ』は1816年に発表された。この物語は、若い青年アドルフが、伯爵の情婦であるエレノールに恋をし、成就し、さらに成就後の倦怠からエレノールの死まで、細かな心理描写で描かれたものである。アドルフはエレノールを、エレノールはアドルフを苦しめていることに常に苦悩するのだが、恋というものにはそれはつきものである。では、意識的せよ無意識にせよ【悪】というものはどうだろうか。
    本論では、この『アドルフ』を【悪】という視点から、引用をもとに具体的に論じていくことにする。
    第一章:アドルフの軽率な行動
    まずこの章では、アドルフのその軽率な行動にいて述べることにする。
    第2章では、アドルフは倦怠の日々を過ごしていた。そんな中、友人の恋の成就に羨ましさを感じている。友人にできて自分にできないのはおかしい、とあたかも一種のゲームのように恋愛相手を探していくので...

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