阿部公房『砂の女』存在を模索する男

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    「存在を模索する男」
      ―阿部公房『砂の女』を読んで―
    【1】文体の特質
    まず目に付くのが、丁寧な描写である。非現実的な世界では特にその必要性がある。読者に砂の部落のことを伝えるために丹念に描かれている。それに加え、例えも多用していることでより綿密な世界を創っている。例えば、水を立たれた状況下での乾きは、「ねばねばと、下の付け根で、熱いにわかが解けている。(中略)からのやかんを、仰向いた口の上に、傾けた。三十秒以上もかかって、やっと二、三滴が、ちょっぴり舌の先をぬらした。だが、吸取り紙のように乾いて、待ち受けていた喉は、よけい狂ったように、のたうちはじめた。(P一六一」)と、描写される。この...

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