学力低下とは何かを明らかにし、社会階層のような社会的不平等と学力がどのような関わりを持つのかについて述べて下さい
学力低下は、これまでも論じられてきたことであり、古いものではない。しかし、現代の学力低下を巡る議論には、従来のものと大きく異なる点がある。それは、根本的な問題として、新しい世代の学力が前の世代の学力と比べて及ばない、縮小再生産のプロセスが始まったのではないか、という点にある。こうした考え方のさらに根本にあるのは、そもそも「学ぶ」、「勉強する」といったことに対する動機付けの低下である。ここでは、表面的な学力低下よりも、学ぶことへの価値づけの低下が問題として取り上げられており、インセンティブ・ディバイド(意欲格差社会)と呼ばれている。すなわち、学力低下論争は、社会階層とのつながりを意識しながら論じられて来た点に非常に大きな特徴がある。
そこで、まずは学力低下の実態に目を向けてみたい。これまで、幾人かによって、実証的なデータが提供されて来ている。こうした論者が憂いているのは、社会階層間で学習時間の格差が拡大していることである。テキストp.68にあるように、1979年と1997...