商人が営業の範囲内で預かった品物(寄託物)の管理について商法593条の規定によれば報酬の有無に関わらず、善良な管理者の注意を持って保管する義務がある。民法659条で無償寄託は自己の財産におけるのと同様の注意義務で足りると定めているが、商取引の安全性の面から、商人がその営業範囲内で受けた寄託物に善管注意義務を定めた。
商法594条ではホテルなどの旅店、飲食店、浴場など客の来集を目的とする場屋営業について、寄託物管理に関して重い責任を負わせている。場屋では不特定多数の人間が頻繁に出入りするため、利用客は自身で所持品の安全を守ることが難しい。これに対して、場屋の主人及び使用人(商人)側に重い責任を課すことによって、利用客に安心を与えようとしたのが本条の規定である。ローマ法のレセプツム責任(受領の事実だけで法律関係画当然に発生する)を踏襲したものであると言われている。客が寄託しない物についても商人の不注意によって滅失・毀損した場合でも責任が問われる。一見して商人側に不利に見えるが、利用客に安心を与えることは、商人の信用の維持にも繋がる。不可抗力の場合は、商人がこれを証明した場合に免責される...