テーマ:『蒸気圧』について、ゼロから始めて国家試験まで到達する(第二部)
蒸気圧降下とラウールの法則
蒸気圧
第二部
蒸気圧降下とラウールの法則
このレポートは、気体の性質で重要であるにもかかわらず非常にわかりにく
いテーマである『蒸気圧』をゼロから始めて、分圧や蒸気圧降下、沸点上昇な
どの“束一性”まで理解を広げていくために書いたものです。
最終的に、薬剤師国家試験で問われる蒸気圧関連の問題を自力で解答できる
ようにすることが目的です。
けして簡単ではありませんが、できるかぎりわかりやすく解説していくので、
みんなも頑張ってついてきてください。
第一部で扱った蒸気圧の概念を背景にして、第二部では蒸気圧降下とラウー
ルの法則について解説していきましょう。
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蒸気圧降下とラウールの法則
さて、次のテーマは蒸気圧降下と Raoult(ラウール)の法則だ!
補題 2
蒸気圧降下について説明せよ。
ラウールの法則について説明せよ。
この補題 2 を考える前に、溶液、溶媒、溶質という言葉の区別は大丈夫かな?
ものを溶かしこんでいるのが溶媒、溶媒に溶けているものを溶質、その全体
をまとめて溶液と言ったね。これらは今からどんどん使ってゆく言葉なので、
念のためここで確認しておこう。
基本事項!
溶質
溶媒
溶液
さて、僕たちは蒸気圧について学んできたけど、ここで新しい言葉が出てき
たね。
“蒸気圧降下”とはいったいなんだろう。でもこれ、実は全然新しい言葉
じゃないんだ。
実は僕たちはたった今、第一部の補題 1 で蒸気圧降下という現象を勉強した
ばかりなんだよ。
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蒸気圧降下とラウールの法則
さっき補題 1 で扱ったのは 2 種類の液体が混合した
ものだった。そして、混合した時に蒸気圧はどうなっ
た?
3mol
2mol
とてもシンプルに思い出すんだ、難しく考えてはい
けない。
邪魔者がいると蒸気圧が下がる。
本当に、たったこれだけのことだったんだ。
どれくらい下がるの??それはモル分率倍になるんだったよね。
だから僕たちは、補題の解説部分で以下の様な計算を行ったんだ。
ベンゼンの分圧=ベンゼンだけの時の蒸気圧×ベンゼンのモル分率
1004hPa
×
3
5
602.4hPa
トルエンの分圧=トルエンだけの時の蒸気圧×トルエンのモル分率
387hPa
×
2
5
154.8hPa
ほらよく見てごらん、ベンゼンの蒸気圧は 1004hPa から 602.4hPa に
トルエンの蒸気圧は 387hPa から 154.8hPa に
それぞれ蒸気圧が降下しているじゃないか!
これが蒸気圧降下という現象だ。ようするに、邪魔者がいると蒸気になりに
くいねって言ってるだけなんだね。
特別新しいことは無いでしょ、実際にそういう現象があるってことに、かっ
こつけて名前つけただけだ。
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蒸気圧降下とラウールの法則
蒸気圧の理解ポイント
その 4
蒸気圧降下とは、邪魔者がいると蒸気圧が下がる現象のことである
3mol
ベンゼン
1004⇒602.4(hPa)
トルエン
387⇒154.8(hPa)
2mol
ね、蒸気圧降下自体はそんなに難しいことじゃないでしょ。
これは液体に液体が溶けている混合溶液じゃなくても、次の図のように液体
に個体が溶けている食塩水(溶液)などでも同じことだよ。
この場合、食塩は溶質、水が溶媒だね。
溶媒の水の蒸気圧は、食塩のせいで弱くなるはずだよね。
もちろんそれが正解だ。そして、どれだけ下がるかという
と、モル分率倍になるんだったよ。
だから食塩水の蒸気圧は、以下の様な式で求められるね。
食塩水の水だけの蒸気圧=水だけのときの蒸気圧×水のモル分率
さあ、ではここで問題だ。もう一方の成分、食塩の蒸気圧はどうなるの?
イジワルな問題だけど、これ、計算しなくても答えはゼロなんだ。
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蒸気圧降下とラウールの法則
『なんで?食塩から見たら水が邪魔者でしょ!ジャマされたぶん下がるのはわ
かるけど、蒸気圧がゼロは言い過ぎじゃねーの?』
と思った君、勉強しているからこその理解度の高さだけど、もっと根本的な
理由がある。
食塩は“不揮発性”の物質だということ!そもそも蒸気にならないんだよ。
蒸気にならないんだから、食塩は蒸気圧を示さないね!コップに食塩を入れ
て放置しても、水みたいにいつの間にか無くなったりしないでしょ!
不揮発性のものは、蒸気圧がゼロ!言われてみれば当然だけど、意外と盲
点だよね。
よって、食塩水の全圧を求めよと言われたら、食塩は蒸気圧を示さないのだ
から“食塩水の蒸気圧”とは結局“水のみの分圧”になっちゃうのも OK かな?
だからね、さっきわざわざ“水だけの”なんて表現を使ったけれど、
食塩水の水だけの蒸気圧=水だけのときの蒸気圧×水のモル分率
コレコレ
そもそも水しか蒸気圧を示さないのだから、こんなの付けなくても普通に
食塩水の蒸気圧=水だけのときの蒸気圧×水のモル分率
これで十分だよね。不揮発性の物質が溶けているだけの一般的な溶液では、
いちいち分けて書いてくれないことが多いので、無駄に悩まないように注意し
てね。
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蒸気圧降下とラウールの法則
さて、ここまでで頻繁に出てきた言葉で書いてきた分圧を求める式、
A の分圧=A だけの時の蒸気圧×A のモル分率
B の分圧=B だけの時の蒸気圧×B のモル分率
散々使ってきたこの式が、実はラウールの法則そのものなんだ。
蒸気圧の理解ポイント
その 5・・・ラウール(Raoult)の法則
定義:混合溶液の各成分の蒸気圧は
それぞれの純液体の蒸気圧と混合溶液中のモル分率の積で表される
要するに
⇒
1 成分の分圧=その成分だけの時の蒸気圧×その成分のモル分率
定義を読むとえらく難しそうだけど、要するに今までやってきたあの式その
ものがラウールの法則だよ。
いいかな、とてもシンプルに考えて。
蒸気圧降下とは、ようするに邪魔者がいると蒸気圧が下がる現象のこと
ラウールの法則とは、降下した後の蒸気圧はモル分率倍だよって言ってるだけ。
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蒸気圧降下とラウールの法則
さて、第二部では蒸気圧降下とラウールの法則について解説しました。
実際には第一部でやったことに、実は名前がついていたんだと言ってるだけ
の内容ですが、定義や用語の理解というのは避けて通れないもの。
これを機会に概念と定義をきちんと結びつけておこうね。
第三部では実在溶液と理想溶液の違いについて、ついに薬剤師国家試験の過
去問を使って解説していこう。
理想と現実にはギャップがある、それは溶液の世界でも同じ。
しかし、それを限りなく理想へと近づけるために、考え、試し、汗をかいて
努力する。次回はそんな話をしていこう。
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