ユニバーサルデザインという言葉が広まった今だからこそ、バリアフリーを見直した卒業論文である。実際には使うことのできないバリアフリー設備を「なんちゃってバリアフリー」と揶揄し、具体的事例とその原因、解決方法を考察している。
(要旨は別途公開しています)
わが国のバリアフリーの現状と課題に関する考察
神戸市内の事例調査から
はじめに
2006(平成18)年に障害者自立支援法が施行されて、障害者の地域生活が勧められるようになった。この法律では公的サービスについて定められているが、実際に地域生活を送る上で重要になってくるのが、同年に「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)及び「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)の廃止に伴い施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー新法)である。バリアフリー新法によって通路の幅や身体障害者用駐車スペースの設置等について定められ、現在ではバリアフリー構造の公共施設が多く見られるようになった。また、障害をなくすという考えのバリアフリーに対し、そもそもバリアを作らないという考えのユニバーサルデザインが1980年代にはアメリカで提唱されており、誰でも使いやすい製品・建物というその理念も浸透しつつある。
バリアフリー新法に則り車椅子が十分通れる幅の通路を設計しても、...