【課題】
終身雇用の現状について、その歴史的経緯をふまえて論じなさい。
【参考文献】
労働の経済学/笹島芳雄
1970年代初頭のOECD(経済協力開発機構)による対日労働調査団は、わが国の雇用制度の特徴として、終身雇用慣行、年功賃金、企業別組合の3点を指摘した。これらの雇用制度は、産業社会の変化に伴い徐々に変容しているが、その枠組みは、今日においても当時と大きく異なるものではない。また大企業中心に実施されているものではあるが、中小企業においてもかなりの程度普及している。ここでは、これらの雇用制度のうち、終身雇用について論ずる。
終身雇用とは、企業は労働者をいったん採用すると、不況下においても雇用継続にあらゆる努力を行い、余程のことがない限り定年(60歳かそれ以上)まで雇用を継続することをいう。終身雇用は、企業と労働者との間の雇用契約や、企業と労働組合との間の労働協約のなかに明文化されているものではなく、いわば労使間の暗黙の了解事項である。この雇用制度の下で、企業は企業の将来の中核となる労働力として、毎年4月にフルタイム労働未経験の新規学卒を採用し、業務遂行の過程で、あるいは業務遂行とは別に教育訓練を施して、また定期的な配置転換を行って、事業活動に必要となる人材を育て上げていく。教育訓練は、大...