刑法Ⅱ 分冊1
以下の事例につき、Aの罪責はどうなるか。
Aは空き巣ねらいのつもりでB宅に侵入し、金目の物を探していたところ、意外にもBが帰宅した。そこで、AはBの台所の包丁を手にしてBに金を出すよう脅した。それに対し、BはAに組みついたため、Aの持っていた包丁がBの腹に刺さった。Aは思わぬ事態に驚き、何も取らずにB宅を出た。Bは30分後、出血多量で死亡した。
まず、 Aは空き巣ねらいのつもりでB宅に侵入したことから、 住居侵入罪について検討することにする。
住居侵入罪(130条)とは、 人の私生活の場所としての住居、 ならびに、 人が事実上管理・ 支配する業務に用いる建造物などへの侵入を禁ずる趣旨の規定であり、 刑罰は3年以下の懲役または10万円以下の罰金である。
成立要件は、 ①正当な理由がないのに、 ②人の住居、 もしくは、 人の看守する邸宅・建造物・艦船に、 ③侵入したとき、 成立する。 とされている。 また、 住居侵入罪は他の犯罪の手段として犯されることが多く、 たとえば、 住居侵入罪と他の犯罪との間に、 客観的にみて手段と結果の関連性が認められる場合は、 罪数関係とし...