行政法は、現行司法試験において短答・論述共に出題される科目でありながら、学問分野としてはともかく、受験生にとって馴染み難い科目であると思います。
それというのも、行政法という科目は、平成18年より新司法試験に導入されて間もない科目であり、市場に出回っている教材も少数なため、手探りで論文対策を講じている受験生が大半であると思います。
そのような中、この参考答案の問題が掲載されている『事例研究行政法[第2版]』は受験生の間で大変好評であり、ロースクールによっては、演習教材として利用しているところもあるようです。司法試験合格者に伺ってみても、行政法のお勧めの演習教材といえば、多くの方がこちらを推薦されております。
そこで、この度『事例研究行政法[第2版]』の第1部につき、参考答案を作成いたしました。演習書に書かれている解説に疑問な箇所については、私なりに検討しておりますので、良い部分、悪い部分を含め、参考になれば幸いです。
とくに、ロースクール在学中の方、ロースクール進学をお考えの方などで、自習学習をされている方にお勧めいたします。
[問題1]ソーラーシステム設置の補助金をめぐる紛争
第1、設問1の検討
1、Aの主張
Y市の「住民」(地方自治法10条)であるAは、設問のとおり、住民訴訟を提起している(同242条の2・1項1号、同4号)。かかる訴訟において、Aの主張を根拠づける法的根拠は、法律(条例)の留保の原則に基づく。すなわち、Y市長が要綱のみを根拠として本件補助金を交付することは、法律(条例)に留保がなく、違憲・違法であると主張する。
もっとも、行政権が行動するに際して、いかなる場合に法律(条例)の根拠が必要となるかにつき争いがある。そこで、行政権を根拠づける憲法の構造に着目して、法律(条例)の根拠が必要な場面を主張する。
(1)そもそも、日本国憲法は、民主的統治構造を採用する(41条、43条1項等参照)。したがって、あらゆる行政活動に法律の根拠を必要と解するのが素直である(いわゆる全部留保説)。もっとも、行政は、変化する行政需要に適応することを求められている(65条、73条参照)以上、全部留保説は実際的でない。そこで、少なくとも、国民の生活を決定するような国家の本質的事項については、法律の根拠を...