成年後見制度は判断能力が低下し、日常生活を単独で営むのに困難が生じた人に対する権利擁護の仕組みである。
以前は、禁治産と準禁治産制度がこれに相当した。しかし、この制度には欠点があり使いにくく利用が伸びなかった。
まず類型が禁治産か準禁治産かの二つしかなく、画一的で一人一人違う保護のニーズに細かく対応できない欠点があった。例えば禁治産とされると日常的な取引にまで取消権が発生し、禁治産者の意思が最終的に後見人次第で覆されてしまうことが起きえた。一人一人出来ることと出来ないことの状態は千差万別であるのに、どれか一つ制約があり保護の必要があると他の全てまで保護対象として取り上げてしまうことになるのである。これでは本人保護の側面が強すぎて不都合である。また本人は一般社会から過度に排除された生活を強いられることになる。
また禁治産者・準禁治産者は戸籍にしっかりと記載されてしまうという欠点もあった。宣告を受けたことが戸籍を通じて他人の目に触れ、本人のみならず家族にまでも影響を及ぼすことがあった。
従来の制度はパターナリズム色が強く本人とその家族にスティグマを与えるものであった。利用者にはメリッ...