1989年11月のドイツ・ベルリンの壁崩壊を機に欧州では各国の有力企業間で国境を越えたM&Aなどが本格化する一方、資金運用面においても、従来の「国単位」による投資から、「EU加盟国を網羅する業種単位」で運用する姿勢へと変化している。一般に、金融サービスは、容易に移動が可能な資本と「情報」を結び合わせることによって提供されるが、欧州では今日のEUの方向性確立を基礎付けたとされる1992年のマーストリヒト条約成立後、とりわけ通貨統合に向けた動きを先取りする形で域内諸国を縦横に移動する資本取引が、情報伝達技術の進歩とともに急速に広がりを見せるようになった。
EUの市場間競争
現在「大欧州」建立の途上にある欧州では、金融・資本市場の統合という政治・経済的命題と一体となる形で、米国とは異なる「市場間競争」が続けられている。
1989年11月のドイツ・ベルリンの壁崩壊を機に欧州では各国の有力企業間で国境を越えたM&Aなどが本格化する一方、資金運用面においても、従来の「国単位」による投資から、「EU加盟国を網羅する業種単位」で運用する姿勢へと変化している。一般に、金融サービスは、容易に移動が可能な資本と「情報」を結び合わせることによって提供されるが、欧州では今日のEUの方向性確立を基礎付けたとされる1992年のマーストリヒト条約成立後、とりわけ通貨統合に向けた動きを先取りする形で域内諸国を縦横に移動する資本取引が、情報伝達技術の進歩とともに急速に広がりを見せるようになった。こうした流れは当然のことながら、一斉に域内諸国の資本・証券市場において、グローバル経済時代に生き残れるだけの機能を身に付けようとする意識を芽生えさせることになったが、それもまた多数の国が独自の規制体制や市場制度を維持してきた欧州が「統合」を合言葉に新たな時代に備え...