集合行動の社会心理について述べよ。
(1)ル・ボンの『群集心理』について
ル・ボン(LeBon,G.)の著書の『群衆心理』(Psychologiedesfoules,1895)はフランス革命と、その後の政治変動を念頭において執筆されたこともあり、内容的には群集を嫌悪し、敵視する彼の政治的立場が色濃く反映されている。よって、この点が後世の研究者に批判される点でもあるが、それにもかかわらず、群衆を学問研究のテーマとして取りあげた功績は、否定できないといえる。
彼はその著書で次のように群集心理について説明している。
「普通の意味で群衆という言葉は、任意の個人の集合を指していて、その国籍や職業や性別の如何を問わないし、また個人の集合する機会の如何を問わないのである。心理学の観点からすれば、群衆という語は、全く別の意味をおびるのである。ある一定の状況において、かつこのような状況においてのみ、人間の集団は、それを構成する各個人の性質とは非常に異なる新たな性質を具える。すなわち、意識的な個性が消え失せて、あらゆる個人の感情や観念が、同一の方向に向けられるのである。一つの集団精神が生まれるの...