相手方に、協議離婚に応じてもらえない場合には、すぐに離婚の裁判をするのではなく、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行う必要があります。調停には、裁判のような強制力はないため、裁判所として離婚が適切だと判断する場合でも、最終的に夫婦の合意がなければ離婚は成立しません。調停において相手方が離婚に応じない場合にはじめて裁判となるのです。
離婚に関する手続き
1.調停離婚とは
相手方に、協議離婚に応じてもらえない場合には、すぐに離婚の裁判をするのではなく、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行う必要があります。調停には、裁判のような強制力はないため、裁判所として離婚が適切だと判断する場合でも、最終的に夫婦の合意がなければ離婚は成立しません。調停において相手方が離婚に応じない場合にはじめて裁判となるのです。
離婚の話し合いがまとまらない場合、また別れることには同意できても、親権者・監護者が決まらない、養育費、財産分与、慰謝料、面接交渉などの条件で同意できないケースなどは、家庭裁判所に調停を申したてる方法で成立する離婚のことです。離婚全体の約9%を占めています。
裁判と混同している人がいますが裁判とは全く別で、裁判の前には調停をしなければなりません(調停前置主義)。例外として、相手が行方不明の場合、調停のしようがありませんので、初めから地方裁判所に裁判を起こすことができます。
家庭裁判所というとなじみもないし不安に感じたり、弁護士が必要なのではないかとためらったり、費用がかかるのではないか、そもそも離婚するかどうか迷っているという人は、家庭裁判所の家事相談室であらかじめ相談することもできます。相談は無料で、相談したからといって調停を申したてなければならないということもありません。今後の対策の参考にすればよいと思います。
①離婚するか迷っていても調停の申立てはできる
離婚すべきか気持ちがはっきり決まらなくて迷っている状況でも調停を申し立てることができます。家庭裁判所の夫婦関係に関する調停は、広く「夫婦関係調整調停」と分類されていて、離婚を求めるものだけではなく、それぞれの夫婦の悩みに合わせて裁判所が夫婦関係の仲裁をしてくれるものです。
②離婚の理由は問われない
調停の申立てに法律的な離婚理由は必要ありません。有責配偶者からの申し立てかどうかは問われず、有責者からの調停申立も認められます。
③さまざまな問題を同時に解決できる
離婚そのものに限らず、親権者・監護者、養育費、財産分与、慰謝料、婚姻費用、面接交渉など離婚に関するあらゆる問題を同時に解決できます。また、離婚の意思は双方合致しているけれど、その他の問題が解決されていないため協議離婚ができないような場合でも、調停を申し立てることができます。
④プライバシーが守られる
調停の場では、家事審判官や調停委員の前で離婚に至った事情を説明しなければなりませんが、家事審判官や調停委員には、担当した事件についての秘密保持義務がありますし、調停そのものは非公開で行われますので、個人のプライバシーが外部にもれることはありません。裁判離婚では、裁判の審理そのものが公開の場で行われますので、他人に聞かれたくないことも秘密にすることができません。
2.調停申立ての理由
調停を申し立てるための理由については、特に制約はありません。調停申立書は、家庭裁判所で入手できますが、その申立て動機欄には次のように例示されています。
性格があわない
異性関係
暴力をふるう
酒を飲みすぎる
性的不満
浪費する
異常性格
病気
精神的に虐待する
家庭をすててかえりみない
家族と折合いが悪い
同居に応じない
生活費を渡さない
その他
3.家庭裁判所ではどのように話し合いが行われるのか
離婚調停手続きは、家庭裁判所において、調停委員二名が、双方から事情を聞き裁判官の指揮のもと両者の間に入って調停案を示すなどして、当事者間で公正で具体的に妥当な合意を成立させ、紛争の自主的任意的解決をはかろうとするものです。裁判官が調停室に来るのは、調停が成立する期日の時などに限られるのが実情です。家庭裁判所では待合室を別にするなどして、双方が顔をあわせないようにするなどの配慮がなされています。
調停は、家事裁判官一人と二人以上の家事調停員、申立て人、相手と五人で話し合われますが、現実には家事裁判官がすくないので二人の調停委員が中心になってすすめます。調停は非公開で夫と妻を交代で調停室に呼んで、事情を聞きながら夫婦がお互いに合意できる点を探っていきます。申立人と相手が直接話し合うわけではありません。
※申し立ての際、申立人の住所を相手に知られたくない場合には、そのことを裁判所に申し立てておけばそのように取りはからってくれるはずです。
※離婚の理由が暴力でありそれから逃げるために別居している場合など、双方が会ってしまうと、相手が申立人に危害を加える恐れがあるようなときには、あらかじめ申し立てておけば、時間をずらして呼び出したりしてくれます。
4.手続き
全国どこの家庭裁判所の窓口にも定型化された申立書が備えてあり、無料でもらえます。東京家庭裁判所など一部の裁判所では、出向かなくてもFAXで簡単に申立書とサンプルを入手できます。この用紙に、申立の趣旨、申立の実情など必要な事項を記入すれば申立書は作成できます。
同居している時は二人の住所地の家庭裁判所に、別居している時は相手の住所地の家庭裁判所に調停申立書を出します。夫婦の戸籍謄本一通が必要です。その他に夫婦関係の破綻を示す資料があれば一緒に添付。申し立て人の印鑑が必要です。夫婦以外の第三者が申立人となることはできません。
①調停申立書はどう書くか
ア.申立ての趣旨
親権者、養育費、財産分与、慰謝料の金額は、申立人の希望額を記載します。その金額を基準に調停の場で調整されていくことになります。
イ.申立ての実情
離婚を決意するまでに至った事情と経緯を簡潔に記入します。調停の場で、いくらでもその詳細について説明する機会を与えてくれますので、事情、いきさつがわかってもらえないのではと心配する必要はまったくありません。
※いままでの事情を詳しく書きたい場合には、申請書に「別紙のとおり」と記載し、別紙を添付することもできます。
※申立て後に「準備書面」というかたちで詳しい事情を記載したものを提出して、調停委員に読んでもらうこともできます(相手にも読ませたいのであれば二通用意します)。
※診断書の写しや不貞の証拠などがあれば提出することもできますが、不調になって離婚裁判となる可能性もありますので、相手にあまり手の内をさらけ出したくないという思惑もあります。その場合には、調停委員に、内緒にしてくれるよう申し出ておくのを忘れないようにしましょう。
②調停申し立ての費用は
費用は印紙代900円、呼び出し通知の切手代約800円(各裁判所で異なります)程度。
③どこの裁判所に申し立てるのか
調停を申し立てる家庭裁判所は次のうちのどちらかです。
ア.相手方の住所地の家庭裁判所
イ.夫婦が合意して決める家庭裁判所
全国どこの家庭裁判所でも都合のよいところを選べます。管轄合意書を作り本来の管轄裁判所に通知します。
※相手方の管轄裁判所に出向けない場合は、自分の住所地である家庭裁判所に自庁処理の上申書を添えて調停の申立をします。特別な事情がある場合には認められる可能性があります。
③裁判所の指定日に出頭する
調停の申し立てが受理されると、調停の期日が決められて、調停の申立人と相手方に「○月○日○時に○○家庭裁判所に出頭してください」という調停期日呼出状が送られます。申立書の写し等は送られませんので、具体的にどのような内容で申し立てられているかは相手方にはわかりません。
第一回目の調停期日は裁判所によって指定されます。どうしても出頭できないようなときには、前もって期日変更の申請書を提出しておけば期日を変更してもらうこともできます。二回目以降の調停期日は、実際の調停の席で決められます。
④調停終了までに要する期間
申立書が受理されれば、約一ヶ月ほどで第一回目の調停日の通知が来ます。調停はその後およそ 一ヶ月に一回の割で開かれ、何回かくり返されます。一回の調停時間は30分から40分程度です。平均すると60%前後が三ヶ月以内、80%前後が六ヶ月以内に処理されています。半年たつと調停成立、不成立、取り下げ、など何らかの結論、見通しがたつのが普通です。
⑤調停は個人出頭主義が原則
どうしても本人が出頭できない場合には、弁護士は代理人として出頭することができますが、弁護士以外の代理人を立てるときには裁判所の許可が必要で代理人許可申請を提出します。親兄弟などは許可が出ることも多く、その場合は代理人になることができます。弁護士をつけたからといってなにもかも任せきりにすることはできません。調停には本人と代理人がそろって出頭するのが原則です。ただし、調停が慰謝料や財産分与など、お金の問題に限られているときは、弁護士の出頭だけで進められることもあります。また、病気などで、どうしても出頭できないときにも、代理人だけで出頭することが許されています。調停成立のときには、必ず本人が出頭しなければなりません。
⑥相手が調停に出頭しない場合
この場合家庭裁判所は呼出しを重ねます。呼出しを重ねても出頭しない場合には、調査官が調査に行き説得します。それでも出頭しなければ、調停を取り下げるか、調停不成立となります。
⑦調停の取り下げ
申立人が、調停を取り下げたければ、いつでも取り下げることができます。取り下げるには、家庭裁判所に取下書を提出すればよく、相手の同意も取り下げる理由も必要ありません。
5.調停調書
調停によって離婚の合意が成立し、双方が納得することができ、調停委員会が離婚するのが妥当と認めた場合には、調停は成立...