?厚生大臣は、薬事法の趣旨・目的や権限の性質に照らし、医薬品の副作用による被害を防止し、国民の生命・健康を保護するため規制権限を有する。
本件最高裁判決では、「薬事法の目的(「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、その適正をはかること」(一条))並びに医薬品の日本薬局方への収載および製造の承認に当たっての厚生大臣の安全性に関する審査権限に照らすと、厚生大臣は、薬事法上右のような権限(当該医薬品を日本薬局方から削除し、またはその製造承認を取り消すこと)を有する」として、明文規定ではなく、旧薬事法の解釈から製造承認の取消権(規制権限)を導き出している。
?その権限は適時にかつ適切に行使される義務があると認定されない。
確かに、最高裁判決では、薬害が発生しても厚生大臣の被害防止のための権限の不行使がただちに国賠法1条1項の適用上違法となるものではなく、「副作用を含めた当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、・・・薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、右権限の不行使がその許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるとき」には国賠法1条1項の適用上違法となる、という判断基準を示した。
トリクロロキン薬害訴訟について
(1)
①厚生大臣は、薬事法の趣旨・目的や権限の性質に照らし、医薬品の副作用による被害を防止し、国民の生命・健康を保護するため規制権限を有する。
本件最高裁判決では、「薬事法の目的(「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、その適正をはかること」(一条))並びに医薬品の日本薬局方への収載および製造の承認に当たっての厚生大臣の安全性に関する審査権限に照らすと、厚生大臣は、薬事法上右のような権限(当該医薬品を日本薬局方から削除し、またはその製造承認を取り消すこと)を有する」として、明文規定ではなく、旧薬事法の解釈から製造承認の取消権(規制権限)を導き出している。
②その権限は適時にかつ適切に行使される義務があると認定されない。
確かに、最高裁判決では、薬害が発生しても厚生大臣の被害防止のための権限の不行使がただちに国賠法1条1項の適用上違法となるものではなく、「副作用を含めた当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、・・・薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、右権限の不行使がその許容される限...